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7月9日に向けて。⑤

このシリーズの③で紹介した『みなし再入国制度』における素朴な疑問について。

文字通り、7月9日以降は再入国許可を得ずとも、外国人が日本から出国しても一定期間(1年若しくは2年)内であれば再入国が可能になります。

そこで気をつけていただきたいのが次のようなケース。

(以下、物語調)

在日コリアンで特別永住者のスニは、念願のカナダ留学へ向けて有効期間10年の韓国パスポートを手に関西国際空港で搭乗手続きを行っていた。

留学期間は6ヶ月で、6月30日に日本を発ち年末に帰国する予定だった。

スニは事前に、7月9日からスタートする新しい在留制度によって、それまで必要とされた再入国許可が不要になることを知っていたので、数年前、韓国旅行に行った際に取っていた再入国許可の期限が8月15日となっていることなど気にも留めないでいた。

しかし、いざ出国手続を行ってみると問題が発生した。

搭乗ゲートで入国管理局職員から『あなたは8月15日までに帰国される予定ですか?』と質問されたスニは、『いえ、クリスマス前に日本へ戻る予定です。』と笑顔で答えた。

すると入管職員は、『それでは再入国許可の期限に間に合わないので、再入国許可を取り直してください。』と言ったのだ。

スニは、職員が新人なのかと考えて、『あの~もしかして、みなし再入国制度のこと、ご存知ないのかしら?』と、相手を小バカにしたような口調で嗜めた。

しかし、『ご存知なかった』のはスニの方だったのだ。

みなし再入国制度がスタートするのは7月9日であり、7月9日以降に有効なパスポートと在留カード(若しくは外国人登録カード)を所持する外国人が出国時にその意思を表明して初めてみなし再入国が認められるのである。

スニの勘違いは、『7月9日より前に日本から出国した場合でも、出国の時点で有効な再入国許可を所持し、かつ帰国時(再入国時)に7月9日を過ぎてさえいれば、例え出国中に再入国期限が過ぎてもみなし再入国対象者として無事に帰国できる』と間違って認識していたために生じたのだ。

入国管理局職員の説明を聞くスニの表情は恥ずかしさで真っ赤になっていたが、もしも間違ってそのまま出国してしまっていたら、スニは何らかの方法で日本に戻ることはできたとしても、もう2度と『特別永住者』としての身分を取り戻すことができなかったのであった。

お終い。

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